当メディアについて
その他メディア

千葉の友人に会いに行った帰り。関西国際空港から兵庫方面に帰る道中でピンと思いついた。私が1人でグルメを巡るきっかけになった店に行ってみようと。
その店の名は「中華そば 花京」。大学時代、サークル活動のために京橋駅で乗り換えて出町柳に向かう際によく立ち寄った。お世辞にも清潔とはいえない歴史を湛え尽くした外観・内観だったが、そこで食べたラーメンのおいしさにぶっ飛んだのだ。
それまでたまに家族でファミレスに行くしか外食の機会がなかった私は、以降、大学の行き帰りに途中下車しては自分の金銭事情で行けるおいしい店を探し歩いた。シラバスを読み込み、京田辺を出てランチ時、ディナー時に大阪付近を通過できる時間割を組んだものだ。
もう京橋にはないことと、今は大正にあることは知っていた。苦手な飛行機旅に疲弊しており、一刻も早く帰りたい気持ちもあったのだが、ぐっと疲れていない振りをする。いざ大正に降り立てば関西国際空港に降り立ったときには感じられなかった大阪に帰ってきたという実感がむくむく湧いてくる。

京橋店ほどの趣はないが、こちらの店構えも悪くない。まわりにもなんだか気になる店構えの飲食店があり、梅田でいつもディナー迷子になる私は大正まで足を伸ばしてもいいのかもと感じた。大東洋に泊まるときにまた繰り出してみようか。
一番はじめに衝撃を受けたのはあっさり鶏ガラ中華そばだったが、こってり背脂中華そばもうまいことを知ると毎回電車に乗っているうちからどちらにしようか悩んだものだ。いざ店に行くと閉まっていたことも多々あり、そんなときには腹の虫がひどく鳴いた。

疲れてこってりしたものが食べたかったので、名前に従順にこってり背脂中華そばをチョイス。ネーミングを忘れてしまったがチャーシューの角切りと卵ののったミニ丼セット(1,240円)で。
34歳になって食べたこってり背脂中華そばは何の変哲もないと言えばそれまでだが、ちゃんと思い出の味がする。チャーシューの感じが変わったように思うし、少し以前よりお上品な感じはするけれど。このラーメンを衝撃を受けずに食えるようになったのは大人になったともスレてしまったとも捉えられる。年を重ねたものだ。さみしくもあるが、そういうものだ。でも、ちょっと目元が潤むくらいには染み渡る。

このミニ丼もおいしい。もう少し思い出に浸っていたかったが、ほかのお客が帰ってしまってお客が私1人になったところで気まずい空気が流れ、それにつられて疲れていたことや旅が終わることも思い出してしまった。背負い直したリュックはラーメンを食べる前よりも重く感じた。思い出が詰め込まれたからかもしれない。
